注目すべき脚本家、アレハンドロ・エルナンデス | MARYSOL のキューバ映画修行

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今日は、キューバ出身でスペインで活躍している脚本家、アレハンドロ・エルナンデスを紹介します。

 

彼が長年仕事を共にしているマリアノ・バロッソ監督と共同で脚本を執筆したスペインのドラマ『華麗なるファラド家』はアマゾンプライムで配信中。

 

華麗なるファラド家 シーズン1を観る | Prime Video (amazon.co.jp)

 

主人公オスカル(写真↓手前右)はしがないエアロビ・インストラクターだったが、武器商人レオ・ファラド(真ん中)の長女サラ(右から2人目)と出合ったことで、隠れた適性を発揮し、恋人から夫へと“昇進。家族として活躍の場を広げていく。

背景は1980年代。武器商人の話ゆえ、世界各地の様々な紛争(中東、アフリカ、ニカラグア)が舞台で、アンゴラ内戦もそのひとつ。ちなみに、ファラド家の顧客は社会主義陣営側。

 

アンゴラのエピソードでは、キューバ人俳優も出演。ウラジミル・クルスがキューバ人大佐パトリシオ(左奥)、エクトル・ノアがキューバの諜報部員ヘンリー(その右のサングラスの男)を演じている(ほかに、イサベル・ディアス、ラウラ・ラモスも出演)。

 

キューバ出身のエルナンデスは、徴兵でアンゴラに2年間派遣されていた経験をエピソードに盛り込んだと言っており、フィクションとはいえ、キューバとアンゴラ内戦の関り(例えば「アンゴラ戦争は部族間の争いだ」というセリフ)や、冷戦からその終結までを、エルナンデス氏の視点を通して垣間見ることができるかもしれません。

 

アレハンドロ・エルナンデス:脚本家、作家 マドリッド在住

1970年 ハバナ生まれ

18才のとき徴兵でアンゴラに送られるが、戦闘兵としてよりも占領軍兵士として過ごし、軍の機関紙に記事を書いたり、空軍の整備士として働く。空軍基地の図書館でフロイトの著書に出会い、心理学に興味を抱く。キューバに戻ると、英語の学士号を取り、サン・アントニオ・デ・ロス・バニョス映画テレビ学校(EICTV)で映画を学ぶ。同校でハイメ・ロサレス(スペインの監督・脚本家)と出会ったほか、ガブリエル・ガルシア・マルケスが教えるワークショップで、マリアノ・バロッソと知り合う。

28歳の時、ノルウェーのベルゲンにある学校で脚本を学ぶ。留学中にキューバからの一時帰国命令に従わなかったため〈離脱者(desertor)〉とされ、5年間入国を禁じられる。スペンに移住し、身分を証明する書類のないまま約3年が過ぎたころ、仕事が舞い込む。

以後、映画やテレビドラマの脚本家として活躍しており、脚本賞へのノミネートも数多い。

2014年にテレビドラマシリーズ Todas las mujeresでゴヤ最優秀脚色脚本賞を受賞。

 

日本では、スペインのベニート・サンブラーノ監督の『ハバナ・ブルース』(2005年)や、アレハンドロ・アメナバル監督の『戦争のさなかで』(2019年)が映画祭で上映された。

 

★ キューバ映画との関り

1996年、最初の小説“La milla”をキューバと米国で出版(英語のタイトルは“The Cuban Mile”)。

その後、キューバ映画産業庁(ICAIC)主催のシナリオコンクールに応募。

キューバ独立戦争を題材にした内容で、最優秀賞を獲得。

ICAICと契約を結んだが、受賞作が映画化されることはなかった。(2009年、この時の構想を元に小説”Oro ciego”を執筆し、翌年スペインのノワール小説のコンクールで最優秀歴史小説賞を獲得)

2001年、 ホルヘ・モリーナ監督の短編 "Molina's Test" 

2005年、ベニート・サンブラノ監督『ハバナ・ブルース』

2007年に出版した2作目の小説”Algún demonio”をキューバのヘラルド・チホーナ監督が“Los buenos demonios”というタイトルで映画化。2018年のマラガ映画祭で最優秀脚本賞を受賞。

2022年、パベル・ジロー監督のドキュメンタリー『パディージャ事件』でエグゼクティブ・プロデューサーを務める。