昨年はキューバ映画の名作『苺とチョコレート』が、1993年のハバナ映画祭で上映されてから30年目に当たるため、様々な記事をネットで目にしました。
その流れはまだ続いており、新しい情報や視点も色々と得たので、記しておきたいと思います。
ハバナの街を背景にしたディエゴ(左)とダビド(右)
まず、本作の映画紹介と解説(我が師、マリオ・ピエドラ教授ハバナ大学教授)を先にお読みください。
私が今回いくつかの記事を読んで、非常に印象的だったことのひとつが、本作がキューバの観客に与えた衝撃と感動(歓喜)の大きさ、そして変化への期待の大きさでした。
すでにピエドラ教授の解説でも《『苺とチョコレート』は、キューバ国民に非常に大きな衝撃を与えた。人口1100万人のキューバで、観客数が1年で200万人を超えた。その結果、同性愛やそれに対する嫌悪を国民レベルで認識するきっかけになったと言えよう。本作のおかげで、我々は己をもっと批判的な眼で観ることを学んだし、キューバ映画は、より一層ダイレクトかつオープンに諸問題を提示するようになったのである》とありましたが、その言葉を上書き、あるいは上回る驚きや感動のコメントが投稿欄には溢れていて、改めて本作の影響力の大きさを目の当たりにしたのです。
そして、〈互いの性的指向やイデオロギーを超え、キューバ人同士は理解し合える〉と感動したこと、〈このあとキューバは良い方向に変わる〉と期待したことが分かりました。
確かに同性婚が認められるなど、大きな変化がありました。
が、その一方で、当時より寛容性や表現の自由が狭まっていることが今問題視されています。
※拙ブログ参考記事:
新旧映画祭と検閲:ハバナ映画祭・INSTAR映画祭・映画人集会 | MARYSOL のキューバ映画修行 (ameblo.jp)
今年1月1日のスペイン「エル・パイス」紙の記事で、ダビドを演じたウラジミール・クルスは次のように発言しています。
「時の流れはハバナの街を侵食したが、官僚たちの教条主義や文化機関の閉鎖性はそのままだ。それどころか、今は『苺とチョコレート』のような映画を撮ることも上映することも難しいだろう。その意味では悪くなっている」。
日本は大丈夫でしょうか?
手遅れにならないよう、キューバ映画と一緒に考えましょう。
追記:
Youtubeに30年後の出演者の証言がありました。