ヘミングウェイとキューバ | MARYSOL のキューバ映画修行

MARYSOL のキューバ映画修行

【キューバ映画】というジグソーパズルを完成させるための1ピースになれれば…そんな思いで綴ります。
★「アキラの恋人」上映希望の方、メッセージください。

キューバ人の不屈の魂を寡黙に描いた映画『永遠のハバナ』(フェルナンド・ペレス監督)のことを思っているうちに、ふとヘミングウェイの『老人と海』のことが思い出されました。
すると突然「ヘミングウェイは、キューバという存在があってこそ、あの作品が書けたのではないか」という気がしてきました。
そう、今までは「ヘミングウェイがキューバ(の観光)に貢献している」イメージだったのですが、むしろ「キューバあってのヘミングウェイ」だったのではないか?と… な~んて思ったら、キューバへの思い入れが強すぎる?

               老人と海
でもそういえば、ペレス監督の『ハローヘミングウェイ』(12月の映画祭で上映!)も、『老人と海』が陰の主役。
監督はあの映画を通して「打ちのめされても敗北しない」人間の尊厳を訴えたかったのではないでしょうか?


ナンカそう考えたら、初めて「キューバの人がなぜヘミングウェイを愛するのか」、そして「ヘミングウェイはなぜキューバを愛したのか」理解できたような気がします。


というのも、実はアレア監督の『低開発の記憶(仮)』(この映画も12月に観られます!)の謎解きをしていた私は、あの映画のなかでヘミングウェイがあまりにもネガティブに捉えられていたため、ず~っと混乱していたのです。
「本当は、キューバ人はヘミングウェイを嫌いだった?」と…


実際、ヘミングウェイとキューバの関係をネガティブに見る意見があるのは事実。 映画の主人公セルヒオが言うように…
「え?どういう意見?」と興味をもった方は、ぜひ12月9日12:30からの上映にお出かけくださいね。
行かれない方は、『キューバを知るための52章』(明石書店)の「ヘミングウェイの家」の項をお読みください。


けれど紆余曲折を経て、ようやく私なりの結論にたどり着きました;
そう!もしヘミングウェイがキューバで暮らさなかったら、きっとあの不朽の名作『老人と海』は生まれなかったに違いありません。
そしてキューバの人たちは、『老人と海』には、自分たちの尊厳ある生が描かれているからこそ、あの小説を愛し、作家を“真友”あるいは“心友”と感じているに違いない、と。


ペレス監督の『永遠のハバナ』、“最も困難な時代にある現在のハバナ”を舞台に、「打ちのめされても打ち負かされない、無名の人々の尊厳ある生」を描いているからこそ、キューバで大ヒットし、人々に感動の涙を流させたのでしょう。

私はあの映画を観て、キューバ人のように泣くことはなかったけれど、今は彼らの涙のしょっぱさを感じます。


皆さんもぜひ『ハローヘミングウェイ』『永遠のハバナ』を観て、『老人と海』にも思いを馳せてみてください。
キューバの心に近づけるような気がします…