このところワケあって『永遠のハバナ』(フェルナンド・ペレス監督/2003年)を見直していました。
「台詞は一切なく、映像と音だけで綴られる、限りなくドキュメンタリーに近いドラマ」なので、サウンドに注目してみたところ、挿入歌「La tarde(午後)」の歌詞が、ハバナの朝から夕方までを映している前半にピッタリなことに気づきました。
実際に映画で流れる部分は“さわり”程度ですが、ネットで歌詞を検索したところ、こんな内容でした(映画に合わせて意訳すると)―
午後(シンド・ガライ作)
君の瞳の輝きよ
君が目を開ければ、夜が明ける
けれど、君が瞳を閉じたなら
午後は死んでしまうだろう
私を苛む苦しみは、余りにも多いから
互いに押し倒しあい、
私を殺そうとするナイフも
ぶつかり合って、刃こぼれする
だから私は倒されないのさ
へ~え、こんなユーモラスな歌だったんだァ。
なるほどハバナの街と暮らし、しかもかなりキツそうな日常をさりげなく、軽妙に表現していますね。
監督の優しい、励ましの思いが伝わってきます…
で、今更ながらマリオ先生に「こんな事に気がつきました」とメールすると、またまた色んなことを教えてくれました。
シンド・ガライはキューバの最も偉大なトロバドール(今で言うシンガーソング・ライター?)。
彼が作る歌はどれも本当に素晴らしいのだが、本人は音楽について何の知識もなかったうえ、読み書きもできなかった!
「午後(ラ・タルデ)」は、キューバ人なら誰でも知っていて口ずさむ歌。
そしてキューバ人にとって、最も大事なのが「私を苛む苦しみは、余りにも多くて、あげく共倒れするから、私は滅ぼされない」という部分。
我々は「苦労が多いのは、良いことかもしれない。なぜなら、多いほうが、返って乗り越えられるから」とよく言うのだが、それは「我々のほうが、苦しみよりも強い」という意味だ。
この歌の題名を「苦しみ(ラス・ペナス)」と思い込んでいる人がたくさんいるほど、この歌詞は有名なんだ。
でも『永遠のハバナ』で一番大事な歌は、ラストの『キエレメ・ムーチョ』だよ。
私はスペインみやげのDVDを見ていたのですが、
日本でも『永遠のハバナ』DVDが12月9日に発売されます!定価¥3990
皆さん、この機会にぜひ、もう一度じっくり細部まで味わってみて下さい。
そして少し強くなれたらいいですね。