DVD『チェ・ゲバラ&カストロ』 | MARYSOL のキューバ映画修行

MARYSOL のキューバ映画修行

【キューバ映画】というジグソーパズルを完成させるための1ピースになれれば…そんな思いで綴ります。
★「アキラの恋人」上映希望の方、メッセージください。

今回ご紹介するのは米国の作品。キューバ映画ではありません。
でも日本語字幕・吹き替え付で発売されています。

    DVDゲバラとカストロ
DVD『チェ・ゲバラ&カストロ』(2002年アメリカ)120分
監督:デヴィッド・アットウッド
脚本:スティーヴン・トルキン
音楽:ジョン・アルトマン「シャル・ウィ・ダンス」
美術:フリジット・ブロシュ「21グラム」
配役:
フィデル・カストロ:ビクトル・ユーゴ・マルティン
チェ・ゲバラ:ガエル・ガルシア・ベルナル
セリア:セシリア・スアレス
ミルタ:パトリシア・ベラスケス
バチスタ:トニー・プラナ


主な(歴史的)登場人物
フィデル・カストロ=主役 

チェ・ゲバラ

ラウル カストロ(フィデルの弟で同志)
最初の妻ミルタと息子フィデリート、ミルタの兄
エドゥアルド・チバス(フィデルが支持したオルトドクソ党の指導者)
バティスタ大統領、ナタリア(フィデルの元愛人)
アベル&アイデー=サンタマリア兄妹
セリア・サンチェス(公私共にフィデルを支える)
ウベル・マトス(カストロと共に戦うが、後に“反革命罪”で投獄される)


内容
キューバ革命前、1949年のハバナを背景に、カストロの大学時代(最初の妻ミルタとの結婚や政治活動)から始まる。

中心は、1953年のモンカダ襲撃から1959年の革命成就にいたる過程:
モンカダ襲撃→失敗→逮捕(同志アベルとアイデー=サンタマリア兄妹の悲痛な逸話)→獄中生活→釈放→亡命→ゲバラとの出会い→キューバへの帰還→革命戦の開始→シエラマエストラでの生活や戦闘の様子(セリアやウベル・マトスの登場、山中からのラジオ・レベルデの放送、NYタイムス記者との会見とその効果)→革命戦の勝利→サンチァゴからハバナへの凱旋


その後は、大股で現在までを駆け抜ける(かなりラフ);
新政権内の意見の相違や、ウベル・マトスの投獄(懲役20年)、ソ連の接近、ピッグス湾侵攻事件、キューバ危機、キューバ無視の米ソ間による危機回避、ゲバラの出立、ボリビアでの戦いと死。
そしてニュース音声で伝えられる現在の問題点やボートピープルの姿。


感想
作品の冒頭で「この作品は歴史的調査をもとに製作された」とキャプションが出るように、概ね史実に沿った内容、いわばドキュメンタリーっぽいフィクションです。
キューバ革命を描いた映画やゲバラのドキュメンタリーは色々ありますが、革命指導者となる以前のカストロまでも描いたものは珍しいので、前編部分が興味深かったです。


そもそも日本ではレンタルビデオショップとかに行っても、キューバ革命やカストロを扱った作品なんてほとんど見つからないのが現状。

そう思うと、このDVD、物足りない部分はあるけれど、キューバ革命入門編として参考になると思います。エピソードも豊富だし。


ただ、背景となるキューバの政治・社会状況については了解済みとして描き、あくまでカストロの人物像に焦点を当てているので、予備知識なしでは理解しにくい部分もあるでしょう。
DVDでおおまかな流れをインプットして、あとは本などで深めていくといいのでは?
私は今、レイセスター・コルトマン著『カストロ』(大月書店)を読んで検証中。
まだ全体の三分の一くらいしか読んでいませんが、いまのところ大筋で(DVDの内容と)一致しています。

          カストロ


個人的な収穫としては、この映画のおかげで、フィデルとラウルの関係、いつ・どこでセリアやウベル・マトスと出会うのかなど、人間関係がイメージしやすくなりました。
またゲバラが、革命闘士としての厳格な側面を見せているのもこの作品の特徴です。


米国の作品にしては、中立で公平な立場をとっている印象。
でもよく考えてみると、米国がキューバに対して行った多種多様な妨害行為(テロ行為とか経済封鎖)については、全く触れられていません。
だから、革命後の困難な状況が、全部キューバ自身の責任と映るかも…
だとすれば、ちょっと不公平な気もします。


ところで、実はワタシ、日本版DVDを観るまで、オリジナルはメキシコの作品だと思っていました。というのも、メキシコで放映されたテレビ映画として、スペイン語吹き替えで見たことがあったからです。
メキシコ帰りの知人が貸してくれたディスクは、3枚のうち2枚目が再生不能。そのうえ、聞き取れないところもあって、「いつか日本語で見たいな~」と思っていたのでした。
幸い今回、日本で出たDVDを貸してもらって見たのですが、英語だったとは! だって、出演者はメキシコ系だし、撮影もメキシコに見えるじゃない?(余計なことですが、モンカダ襲撃の場面でディエゴ・ルナが出ていると思われるのですが、クレジットに名前がない…そっくりサン?)
で、さらに意外だったのが、作品の長さ(というか、短さ)。
(次回に続く)